今さら聞けないiOS 11の疑問!メールの取得方法に追加された「フェッチ」の「自動」とは?「プッシュ」との違いは?

iOS 11から、メールの取得方法の「フェッチ」に「自動」という項目が加わりました。この「自動」という表現が少しわかりづらいのですが、従来の「プッシュ」とは何が違うのでしょうか?「自動」にすると何が変わるのでしょうか?また、「自動」はいつでもどこでも使用できるのでしょうか?今回は、そのような疑問に対して、筆者がAppleのサポートに問い合わせた結果を共有したいと思います。

「フェッチ」の「自動」は、限りなく「プッシュ」に近い「フェッチ」

まず、メールの取得方法の設定方法について解説します。

「設定」→「アカウントとパスワード」→「データの取得方法」をタップします。なお、筆者はiCloudメールのみ使用しているため、GmailやOutlook.com等のアカウントは追加していませんが、その他のアカウントを使用するためには「アカウントを追加」をタップします。

「プッシュ」を有効化するためには、「プッシュ」をチェックします。

また、iOS 11から「フェッチ」の項目に「自動」が追加されていることがわかります。

「プッシュ」と「フェッチ」の違いについて

メール、カレンダー、連絡先といったアカウントに紐づくデータの取得方法(更新方法)は2種類です。それが、「プッシュ」と「フェッチ」です。

プッシュ

「プッシュ」とは、(たとえば、メールサーバーなどの)任意のサーバーから、iPhoneに新着データが存在する旨を通知し、iPhoneに自動的にデータをダウンロードする仕組みのことです。iPhone側では、サーバーから新着データが存在する旨の通知を受信できるように、常に待ち受けている状態になります。iPhoneは、サーバーからデータが更新された旨の通知を受け取ると、自動的にデータのダウンロードを行います。そのため、iPhoneを起動している間、常にデータが更新されている(サーバーと同期されている)状態になります。

たとえば、iCloudメールの場合、新着メールがメールサーバーに届き次第、iPhoneは自動的に新着メールをダウンロードします。トリガー(契機)はサーバー側にあり、iPhoneは常に待ち受けている状態となります(iPhone側は、いつでもどこでもメールのダウンロードができるように、メールサーバーからの通知を待ち受けている状態となるため、バッテリーの消耗が早くなる可能性があります。よくiPhoneのバッテリをー節約するためには、メールの取得方法を「プッシュ」ではなく「フェッチ」に変更しましょう、とあるのはこのためです)。

「プッシュ」と「プッシュ通知」の違い

よく混乱するのが「プッシュ」と「プッシュ通知」という用語の使い分けです。一般的に「プッシュ」はメール、カレンダー、連絡先といったデータの取得方法(自動的にダウンロード)、「プッシュ通知」は更新があった場合にiPhoneに知らせる機能(データがダウンロードされるわけではない)を指します。プッシュ通知に対応しているアプリケーションの場合、iPhoneにリアルタイムに「通知」されます。なお、「プッシュ通知」「プッシュ」ともに、iPhoneおよびサーバー側(アプリ側)が対応している必要があります。

フェッチ

「フェッチ」は、「プッシュ」とは異なり、「手動」でダウンロードを行う機能です。「プッシュ」がサーバーからのデータの更新があった旨を契機に、iPhoneがデータのダウンロードを行うのに対して、「フェッチ」はiPhone側からサーバーにデータの更新の有無を確認し、更新があればデータをダウンロードする仕組みです。

たとえば、Gmail自体は「プッシュ」の仕組みには対応していますが、iPhone側が対応しておらず、「フェッチ」のみです(iOS 4以前は「プッシュ」に対応していましたが…)。そのため、iOS標準のメールアプリでGmailを確認するためには、メールアプリを開いて新着メールをダウンロードする必要があります。

この「手動」ダウンロードを改善する仕組みが「スケジュール」です。iOSでは「15分ごと」「30分ごと」「1時間ごと」の設定が可能です。スケジュールを設定しておくことによって、指定された間隔ごとにサーバー側に新着データがないかどうか、iPhoneから問い合わせを実施し、新着データがあるとiPhoneにダウンロードします。「プッシュ」が「サーバー」が契機であったのに対して、「フェッチ」では必ず「iPhone」(クライアント)が契機になります。iPhoneからのリクエストに応じて、サーバーが新着データの有無を返す仕組みです。「スケジュール」の間隔が短くなればなるほど、iPhoneからサーバーに問い合わせる(通信する)機会が多くなるため、バッテリーの消耗に影響を与える可能性があります。

では、「フェッチ」の「自動」とは何か?

前述のように「フェッチ」は、アプリケーションを開いて「手動」でデータをダウンロードする必要がありましたが、iOS 11では「フェッチ」の仕組みが(ほんの少しだけ)改善されました。「スケジュール」に「自動」が追加されたのです。「自動的」に「手動」でデータをダウンロードする?ますます混乱してきました。

iOS 11では、iPhoneがWi-Fiに接続されていて、かつ電源に接続中のみ、「限りなくプッシュに近い状態でデータを自動的にダウンロードできる」ようになりました。「フェッチ」に対応していないサービス(たとえば、Gmail)においても、iPhone側からサーバー側に対してリクエストを送り続けて、サーバー側から新着データがあった旨の応答を確認すると、「自動」でデータをダウンロードできます。

「プッシュ」は、「サーバー」から「iPhone」に対して、「フェッチ」は、「iPhone」から「サーバー」に対して、という契機自体に変わりはないのですが、この「iPhone」から「サーバー」に対してという行為自体を、ほぼリアルタイムに行うということです。よって、スケジュールを「自動」に設定しておくことにより、「プッシュ」に近い形でデータをダウンロードできるようになります。「擬似プッシュ」のような仕組みですね。

ただし、前述のように「自動」が有効なのはiPhoneがWi-Fiに接続されていて、かつ電源に接続中のみです。**Wi-Fiに接続されていない、または電源に接続されていない場合は「手動」**になるため注意が必要です。常にバックグラウンドで動作するため、iPhone側のバッテリーの消耗に影響を与えるためこのような制限が設けられているのでしょう。

いつもなら定期的にダウンロードされていたデータが、「自動」に設定していたがために、外出先でデータがダウンロードされていなかったということになり兼ねません(少し大げさな言い方かもしれませんが)。オフィスにWi-Fiが整備されており、常に電源が供給されているという満たされた環境下においては便利な機能かもしれませんね。

なお、「Wi-Fiに接続されていない」「電源に接続されていない」条件下では、「手動」と同一の状態になるため、フェッチのスケジュールを「自動」にしている場合で、かつこのような条件下において、バッテリーの消耗が激しくなるということはありません。

まとめ

簡単にまとめておくと以下のようになります。

  • 「プッシュ」は、サーバーが契機となりデータをiPhoneに自動的にダウンロードする仕組み(そのため、ほぼリアルタイム)
  • 「フェッチ」は、iPhoneが契機となりデータをサーバーから手動でダウンロードする仕組み
  • 「フェッチ」では、スケジュールを設定することで、(リアルタイムではなく最高15分間隔で)定期的にサーバーから新着データをダウンロードすることができる
  • 「フェッチ」の「自動」は、ほぼリアルタイムに、iPhoneが契機となりデータをサーバーから手動でダウンロードする仕組み
  • 「フェッチ」の「自動」が有効になるのは、iPhoneが「Wi-Fiに接続されていて、かつ電源に接続されている」状況下のみ
  • 「フェッチ」の「自動」を有効にしていても、上記の条件を満たさない場合は「手動」になる(バッテリーへの影響はとくになし)
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